猫屋春子はかく語りき

CAT AND SPRING

その小さなプライドが大事なのかも

例えば、こっちから聞いてもいないのに、自分の勤め先を言う人がいる。○○商事とか○○建設とか。だいたいその場合は大企業で、聞いてもいないのに聞かされる身としては、「この人は自分が大企業に勤めていることを、アピールしたいんだな。なんだろう、ちっぽけなプライドだな」とやや呆れ気味に思ってしまう。

また例えば、税理士や弁護士、大学教員など社会的にハイソな職に就いている人も、聞いてもいないのにわざわざ職業を伝えてくる傾向がある。「ああ、そうなんですね」とか、持ち上げとかないと面倒そうな人だなと思ったら「そうですか!すごいですね!」とか、意味なく褒めておくのだけれど、やはり「ちっぽけなプライド」をそこに感じずにはいられない。

でもさ、なんか思ったんだよね。そのちっぽけなプライドが、おそらく各人にとって大事なんじゃないかなーということを。そのちっぽけなプライドに守られて、生きてきて、いま自分がここにあるという感じなんだろうなーと。だから、ちっぽけなプライドを周囲の人々にキラリと光らせて、自分の存在を成立させているのかなーと。

逆に言えば、そうでもしないと自分の存在が成立せず、また、その人の内面は恐ろしく空洞で、拠り所がなく、不安定なのかもしれない。だから、他人のさ、ちっぽけなプライドは馬鹿にしちゃいかんのよ。そのプライドがなかったら、あっという間に壊れてしまうような心を持っているかもしれないわけで。

ただ、人間なんて、その程度のものなのかもしれない。その程度に弱くて、自己防衛のために高学歴や高収入な仕事を盾に振るう。他人がそれを「ちっぽけなプライドだな」と思っても、本人にとっては社会を渡っていくためのドでかいアイテムなのかもしれない。

 

とはいえ、嫌いだけどね。こっちが聞いてもいないのに、勤め先とか職業などをアピールしてくる人。男でも女でも嫌だなあ。なんだろう、そこには嫉妬心もあるのかもしれないけど、なんつーか、勤め先とか職業で人間を判断するヤツだと思われてるのが、嫌っつーか。あんたがどんな会社に勤めてようと、いくら稼いでようと、そんなの私のあんたに対する評価には一切影響しないよ、その小さなプライドは尊重するが、あんたのことは好きにはなれない。

やばい、雨降って来た。


奥田民生 マシマロ POPHILL 2000