猫屋春子はかく語りき

CAT AND SPRING

映画「リバーズエッジ」の感想を少し

昨夜、映画「リバーズエッジ」を観た。昔から岡崎京子の漫画を読んでは1週間ほど暗い気持ちになってしまうことが多かったので、自然と岡崎京子作品からは遠ざかっていた。作品の内容というよりも、あの雰囲気が苦手なのだ。

だから「リバーズエッジ」が映画化されると聴いた時も、「ああ、絶対観に行くのはやめておこう」と胸に誓ったほど。その誓いが今回破られることになったのは、吉沢亮を観たいがためである。本当に人間か?と思ってしまうほど美しい尊顔を拝みたかったのだ。そうして私の岡崎京子作品に対する誓いは易々と破られた。

movie-riversedge.jp


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2時間後、映画を観終わって暗く重たい気持ちにはなったが、1週間引きずるまで暗くなることはなかった。それは映画の中に、なかなかのエロシーンが多かったせいかもしれない。私は映画でエロシーンが出てくると、なんつーか興ざめしてしまう。基本エロって明るいじゃないすか。他人のセックスなんて「ははは、やってるやってる」と指さして笑えるようなもんじゃないすか。(ちなみに、二階堂ふみのおっぱいは大きくないけど、形の良いお椀型だった。爽やかな肉体でした。)

この映画が面白いか面白くないかと言えば、正直、いまの私が観て退屈な映画だった。でも、いろんなことがあるにせよ、若者の退屈な日常を描いている映画なのだろうから、この感想はある意味、正しいのかもしれない。


映画『リバーズ・エッジ』本予告

いじめ、暴力、セックス、叶わない恋心、嫉妬心、殺意、死体。「リバーズエッジ」が描かれた90年代半ばも現在も、それらは覆い隠したいけれど隠せない、我々の日常の一部だ。昔の若者も、今の若者も、出来れば見たくなかった感情や風景と対峙しながら大人になっていく。慣れてしまえば、それらは日常の景色の一部となる。そして次第に退屈になる。「全てのことに慣れてしまうね、私たちは」という言葉が、二階堂ふみの口から聞こえそうなくらいだ(そんなセリフ、存在しないんだけど)。

だからこそ、ラストの方で山田くんが「もう一度、UFO呼ぼうよ」と若草さんに言うシーンは、なんだかグッとくる。この退屈はきっと覆せるにちがいない、という希望を象徴するようなセリフ。私はもう40で、その退屈はどうしたって覆せないことに薄々気づき始めているけど、若者は信じている、希望を持っているのだ。退屈な日常はきっと覆せると。そしてその退屈には終わりが来ると。

こういう希望をもって日々を過ごしていた若い頃を、少しだけ思い出す。ああ、そんな日が私にもあったかも、と。この映画の中に出てくる若者も、暗い中に、かすかな希望を見出そうとしている。そのせいで壊れたり、うまくいかなかったりするけれど、その希望にあがく姿は切なくて、美しい。希望は、若者の特権であり美しさだ。「UFO呼ぼうよ」というセリフを吐く吉沢亮演じる山田くんの横顔もまた、とても美しかった。

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ちなみに、吉沢亮のファンは観た方がいいかも。「サバイバルウェディング」の柏木王子とのギャップが凄いし、山田くんの役にピッタリはまっている。同じ人には見えないっす、マジで。最近の若手俳優の中では、演技力、群を抜いてるなあと思う。