猫屋春子はかく語りき

CAT AND SPRING

生きるということは魂の可能性を奪うということ

HondaオデッセイのCMでかかっている曲を聴いて、調べたらSiaの「Alive」だった。一昨年、土屋太鳳が振り付けをつけていたあの曲。土屋太鳳の前衛的なダンスばっかり見て、ちゃんと曲は聴いてなかったらしい。んで今回ちゃんと聴いたらすげー良い曲なのね、「Alive」って。Adeleとの共作なのね。本人が顔見せしないってのもいいね。

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で、歌詞も気になったからAliveの歌詞を和訳しているサイトなんかを探してみたんだけど、最初に読んだとき「あなた」って誰のことだろう?と思ったのです。歌詞のところどころに出てくる「あなた」。親?友人?恋人?うーん、全体を通して読んでみたけど、どれもしっくりこないなあ、と。Siaの歌詞は以下の通り。一部抜粋。

I had a one-way ticket to a place where all the demons go
Where the wind don't change
And nothing in the ground can ever grow
No hope, just lies
And you're taught to cry into your pillow
But I survived

簡単に下手くそな和訳をつけると、
「私は悪魔が行くような場所への片道チケットを持っていた。そこは風向きが変わず、大地には決して何も生えないようなところ。希望はなく、あるのは嘘だけ。そして「あなた」は泣き寝入りすることを強いられた。だけど私は生き伸びた。」

さらに次の歌詞。

You took it all, but I'm still breathing

「「あなた」は全てを奪っていった、だけど私はまだ息をしている」

さらにさらに次の歌詞。

I have made every single mistake
That you could ever possibly make
I took and I took and I took what you gave
But you never noticed that I was in pain
I knew what I wanted; I went in and got it
Did all the things that you said that I wouldn't
I told you that I would never be forgotten
And all in spite of you

「私はあらゆる小さな間違いをし続けている。それは誰にでも起こりうるようなものだけどね。私は受け取った、受け取ったわ、「あなた」が与えてくれたものを私は受け取った。でも「あなた」は私が苦しんでいることには決して気づかなかった。私は自分が何を欲しているのか知っていた。だから自分でそれを掴みに行ったし、「あなた」が言うことはやりたくないことでも全部やったの。私は「あなた」に言うわ、私は決して忘れ去られることはないだろうと。そして「あなた」のことをものともしないわ。」

歌詞の解釈って書いた人にしかきっとわからないだろうし、翻訳自体が間違っている可能性も大だし、リスナーの解釈なんて大概外れているものなんだろうけど、なんかこの曲を聴いたとき、この歌詞に書かれている「you=あなた」って誰か実際にいる人とかではないのでは?と思ったのです。じゃあ誰のことかと言うと、それは、現実に生きることそのものなんじゃないかという気がしたのです。

この世に生を受ける前、魂が持っていた全ての可能性は、誕生とともに生を受け、現実を生きることによって少しずつ削られていく。そのことを歌っているのではないかと。生きることでいろいろなものが与えられるけど、魂が持っていた可能性は少しずつ奪われていく。だけど生き続けなければならない。生きるということは、魂自体が持っていた可能性を奪うこと。生きることと魂は死ぬまで闘争し続ける。でも魂は生きることには屈しない。

つまり、「あなた」は現実に生きること、「私」は魂のことを意味しているのではないかという解釈。いやー、我ながらすんごい飛躍的な解釈。でもちょっと面白いかなと。長く生きる間に、自分が持っていたはずの可能性が少しずつ消えていくのは本当だし、それでも自分の中にあるなんらかの魂的な筋に反して生きるというのも違うし、現実世界に染まり切るのも違和感だし。

Siaはオーストラリア出身だそうですが、オーストラリアのイメージがこの歌詞でガラッと変わった。もっと太陽サンサンで超陽気な人しかいないイメージだったけど、日本人もオーストラリア人も同じ人間なんだなと感じた。生きることへの悩みは、人種や民族、世代に関係ないのですな。