猫屋春子はかく語りき

CAT AND SPRING

青春ロックバンドの難しさ

先日、久しぶりにゴーイングアンダーグラウンドの曲を聴いた。もう今の若い人はゴーイングアンダーグラウンドなんてバンドすら知らないのではないか。でも我々アラフォー世代にとっては我々世代の青春を歌うロックバンドの1つだった。歌詞に出てくるボクとキミの日常や恋愛、青春をキラキラ歌う青春バンドだった。


GOING UNDER GROUND/トワイライト


バンドの結成は1991年。1994年頃にメジャーデビューしていくつもの傑作を作り上げてきた。しかしボクやキミの青春はいつまでも続かない。2009年にはキーボードの伊藤さん、2010年にはドラムスの河野さんが脱退し、現在は3人での活動を細々と続けている。その間にキラキラとした青春ソングを歌うことはなくなっていった。当然だろう。40に近いおっさんらがまだキラキラしながら青春ソングを歌っていたら、それは奇跡に近い地獄絵図だろう。意地の張りようにも程がある。


BUMP OF CHICKEN 「ガラスのブルース」


ゴーイングアンダーグラウンドのように、キラキラした青春ソングを中心に歌ってきた我々世代(現在アラフォー)のロックバンドは彼らの青春に翳りが見えるころ存続の危機を経験している。そう、いつまでもボクやキミの青春は続かないのだ。

バンプオブチキンは当初の勢いは失いながらもメンバーの脱退や変更なく現在に至っている。青春の終わりをなんとか乗り越えたと言えるだろう。ゴーイングステディは解散して銀杏ボーイズになったがボーカルの峯田を残して他3人が脱退。10年ぶりに発表したニューアルバムには前作のような青春ソングは収録されておらず、そのことがファンの間に賛否両論を生み出した。バンプのように青春の終わりを乗り越えることはせず、とにかくいまの自分に正直な音楽を生み出そうとしたのが銀杏なのだが、その結果はメンバーの脱退とファンの減少(それでも銀杏を続ける峯田を私個人はリスペクトするが)。


銀杏BOYZ 夢で逢えたら


そのほか同世代のバンドであるナンバーガールスーパーカーイエモン、ザ・ミッシェルガンエレファントはみな解散。これらのロックバンドは特に青春ソングを歌っていたわけではないのだがバンド結成の動機にやはり若さや青春ということが関係していたのではないかと思う。と同時にロックが流行らなくなりCDが昔ほど売れなくなってきたという理由もあるだろう。ロックの次に来たのはR&Bブームである。宇多田ヒカルの台頭である。小室哲哉が宇多田を聴いたときに自分の音楽は終わったと感じたらしいが、ロックもまた時代の流れに埋もれてしまった。R&Bの影に隠れてしまったのだ。(ただ、その中でもくるりが埋もれなかったのは、おそらく音楽性をコロコロ変えているという批判はあれど、それがバンドの命をつないだのだ。彼らは変化することを恐れないから、滅茶苦茶ロックなアルバムを出した後、次に西欧のオーケストラを取り入れたアルバムを作りだした。ロックの流行が終わる前に自分から違う方向へと進んだわけである。)


NUMBER GIRL - OMOIDE IN MY HEAD (last live, last song)


しかし今、我々アラフォー世代が20代だったころに活躍していたロックバンドの青春ソングを聴くとやはりいい曲なのだ。傑作が多いなあと思う。何よりも情熱や勢いがある。今は流行らなくなった情熱や勢い。情熱や勢いで方々に迷惑をかけてきた私のような人間もいるが、それでも情熱や勢いは人生にとって大切なものだと自負している。そのせいか私はあの頃R&Bの影に隠れて流行らなくなってしまった青春ロックを、今の若い世代におすすめしたい。強く、ではない。時間のあるとき、何もすることがないとき、昔の曲を聴いて少し心がポッと温かくなれば良いと思っている。


GOING UNDER GROUND - グラフティー